東洋医学における呼吸の役割

東洋医学においても、呼吸は重要な役割を果たしており、特に中国伝統医学では呼吸法を利用した治療法があります。以下では、東洋医学と呼吸の関係について詳しく解説します。

目次

呼吸における東洋医学の視点

東洋医学においては、呼吸は「気(き)」と呼ばれるエネルギーの流れを司るとされています。気は、身体の生命力や機能を支配する力であり、呼吸を通じて、吸い込んだ気は、身体内の経絡や臓腑に送り込まれ、身体機能の活性化につながります。

現代医学では、呼吸は肺が行う機能ですが、東洋医学では、呼吸は肺と腎が協力して行うものとして考えられます。肺は、呼吸と血液循環に深く関わっており、外部から吸い込んだ気を体内に取り入れることで、体内のエネルギーを補充します。一方、腎は、体内のエネルギーの源であり、体内の水分代謝や排泄、生殖機能などに深く関わっています。

肺と腎は、互いに補う関係にあり、肺が取り入れた気が腎に送られ、腎がエネルギーを生成して肺に戻すというサイクルが繰り返されます。このため、肺の状態が悪化すると、腎の機能も低下し、逆に腎の状態が悪化すると、肺の機能も低下すると考えられています。

呼吸と気の流れ

東洋医学では、呼吸と気の流れは深い関係にあります。気は身体内を流れるエネルギーであり、呼吸によって体内に取り込まれた酸素が気となって全身をめぐります。そのため、呼吸が浅かったり、不規則であったりすると、気の流れが悪くなり、身体の調子が悪くなると考えられています。以下に、代表的な気の流れの不調をリストアップしてみます。

気虚(ききょ)

気が不足している状態で、疲れやすさやだるさ、食欲不振、冷え性などが現れる。

気滞(きたい)

気の流れが滞っている状態で、胃腸の不調や頭痛、肩こり、生理痛、イライラや不安感などが現れる。

気逆(きぎゃく)

気の流れが逆流している状態で、吐き気や嘔吐、胸焼け、呼吸困難などが現れる。

気血不足(きけつぶそく)

気と血の流れが不足している状態で、めまいや立ちくらみ、動悸、肌荒れなどが現れる。

気虚血瘀(ききょうけつお)

気が不足している状態で、血流が悪くなり、疲れやすさやだるさ、関節痛、冷え性、月経不順、生殖器の不調などが現れる。

一方、深くゆっくりとした呼吸を行うことで、気の流れを整えることができます。また、東洋医学では呼吸の質に注目しており、呼吸が浅かったり、荒くなったりすることで心身にストレスがかかり、不調を引き起こすことがあるとされています。

呼吸における鍼灸治療

鍼灸治療において、呼吸に関わる治療をするときは、肺と腎が密接に関連しているという東洋医学の考え方に基づいて治療を行います。

肺と腎の治療をする場合、肺を補うためには、肺の経絡や関連するツボを刺激して気の流れを調整します。一方、腎を補うためには、腎の経絡や関連するツボを刺激してエネルギーの循環を促進します。

肺経の代表的なツボ
  • 中府(ちゅうふ):鎖骨の下を肩に向かって撫でていき、肩の骨に当たって止まる所から、約指2本分下にあるツボで、肺経全般の症状に効果的です。
  • 尺沢(しゃくたく):肘を曲げたときに出てくる、肘の線の親指側にあるツボで、せき、喘息に効果的です。
  • 孔最(こうさい):尺沢から指4本分親指に向かったところにあるツボで、激しい咳や喘息、うつ病などに効果的です。また、痔の特効穴としても有名です。
  • 列缺(れっけつ):手首にある親指側の骨のふくらみの内側の動脈に、中指を当てたときに人差し指が当たるところにあるツボで、咳や喘息の他、首のこわばりなどにも効果的です。
  • 魚際(ぎょさい):母指球のほぼ真ん中で、赤い皮膚と白い皮膚の境目にあるツボで、咳や喉の炎症、痛みに効果的です。
腎経の代表的なツボ
  1. 湧泉(ゆうせん):足の裏の土踏まずの前側にあるツボで、疲労回復や精力減退など、肉体的な消耗を回復する場合に効果的です。
  2. 照海(しょうかい):内くるぶしから親指1本分の幅だけ垂直に下がったところにあるツボで、利尿作用や生理不順などに効果的です。
  3. 太溪(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間にあるツボで、慢性腎臓疾患、婦人科疾患、免疫力低下などに効果的です。。
  4. 大鐘(だいしょう):アキレス腱の縁を撫でおろしていって踵の骨に突き当たるところにあるツボで、肺や気管支に作用して、喘息などを鎮めるのに効果的です。
  5. 築賓(ちくひん):内くるぶしの上5寸(四横指+三横指)の高さにあるツボで、解毒作用があり、吐き気や下腹部の痛み、冷えに効果的です。

また、呼吸法や運動療法などを組み合わせて、肺と腎の機能を同時に改善することもあります。患者さんの症状や状態に合わせて、個別に治療計画を立てていきます。

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