このような腰痛には鍼灸治療
- 冷えると痛みが増す
- 足にしびれや違和感がある
- 痛む場所が決まっている
- 同じ姿勢を続けると腰・お尻あたりが辛くなる
1.冷えると痛みが増す
これは、冷え症による血流障害が原因で発生する腰痛です。
体質的な身体の冷えや外部からの寒冷刺激が引き金となります。
そのため、筋肉量が少ない方や貧血気味の方によく見られるタイプです。
入浴などで身体を温めると症状が緩和される場合、このタイプの腰痛を疑ってみましょう。
腹部と脚の関節周辺は身体の冷えの主な原因となりやすい部位です。これらは日常生活での動きが少ないため、冷えやすくなります。特に腹部は体脂肪が蓄積しやすく、同時に筋肉の活動が制限されているため冷えが顕著です。
この冷えの根源となりやすい部位を灸で温めたり、鍼で優しく刺激して血流を促進させることが一つのアプローチです。身体の冷えが解消されることで、腰痛が改善されることがあります。
2.足にしびれや違和感がある
この症状は、東洋医学的に身体の水分代謝が滞ることで引き起こる腰痛としてまとめられます。
これを東洋医学では「痰湿」による腰痛と呼びます。
腰やお尻が重く感じられ、痛みが生じるのも、このタイプの腰痛の特徴です。
いわゆる「坐骨神経痛」も、東洋医学的にはこのタイプに分類されます。
坐骨神経痛のある腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の場合、問題のある場所を特定しやすく治療方針も立てやすいのですが、坐骨神経痛のない腰痛に関しては、全身に対する治療が必要です。
痰湿による腰痛の治療では、全身のむくみの解消が重要です。むくみは体液の過剰な蓄積により発生し、手先や足先など末端でも起こりやすくなります。鍼やお灸を用いて優しく刺激を加え、血管を拡張させることで余分な体液を排出しやすくし、むくみを緩和します。
3.痛む場所が決まっている
この症状は、古い血液が血管の中に滞留してしまい引き起こるタイプの腰痛です。
これを東洋医学では「瘀血(おけつ)」による腰痛と呼びます。「瘀血」とは、東洋医学で滞留して古くなった血液を指します。
血流は血管が分岐している場所や、流れが曲がりくねっている場所で乱流を起こし、古い血液が滞留する傾向があります。
古い血液の滞留が身体のいたる所で起きると、身体に不調を引き起こし、その症状の一つとして現れるのが腰痛です。
このタイプの腰痛は、前項の「痰湿による腰痛」を伴うこともあり、足の痺れが生じることもあります。
また、女性に多く見られる腰痛で、生理不順や月経痛、月経前症候群(PMS)などの症状を伴う場合が多いとされています。
古い血液が溜まりやすいのは、全身の関節周辺や骨盤周りです。こうした部位は構造的に複雑で、血液の流れが滞りやすい箇所です。治療では、古い血液が滞留している場所を特定し、その箇所に焦点を当ててアプローチします。
このタイプの腰痛は個人差があり、一概に治療法を説明することは難しいですが、骨盤周りや肘、足首周辺のツボに鍼を用いたり、足首やお腹のツボにお灸を施すことで温熱刺激を加える治療が行われます。
4.同じ姿勢を続けると腰・お尻あたりが辛くなる
これは、筋肉や関節の硬さに起因する腰痛です。
東洋医学では「労倦(ろうけん)」による腰痛と呼ばれます。
これは最も改善しやすく、原因が特定しやすいタイプの腰痛です。
いわゆる西洋医学で言うところの「筋・筋膜性腰痛」に該当します。
おしりや足に怠さを感じる方も多いです。
背骨は腰から首まで連続しており、腰と後頭骨と頸椎の境界にある「後頭下筋群」も密接な関係があります。
後頭下筋群の中の頭半棘筋と下頭斜筋は、はり治療で刺激を入れやすい筋肉で、特に腰痛の治療に効果的です。また、腰の筋肉が硬くなる原因は、腰自体よりもおしりの筋肉の硬さが影響して骨盤が傾いたり、太ももの筋肉が骨盤を引っ張って傾いたりすることが多いです。そのため、おしりや太ももへのはり治療が効果的とされます。