トリガーポイントの定義
トリガーポイントとは、筋肉や筋膜内に存在する過敏な部位のことです。触診時には痛みが確認でき、特有の関連痛、自律神経反応などを起こすことがある、結節状または帯状の硬結です。
簡単に言うと、トリガーポイントは、筋肉の中にある痛みのスイッチのような小さな硬い部分で、押すと痛みを感じたり、別の場所に痛みが広がったりする特殊な点です。
普通のコリとの違い
トリガーポイントは、筋肉内の特定の小さな点で鋭い痛みを伴い、離れた場所に痛みを放散させ、長期間持続しやすく、特殊な治療法を必要とする点で、広範囲に渡る鈍い痛みで一般的なケアで改善しやすい普通のコリとは異なります。
もっと分かりやすく言うと、トリガーポイントと普通のコリの違いは、「道路の陥没」と「道路全体の渋滞」の違いのようなものです。道路の陥没は工事が必要ですが、渋滞は放っておいても自然と解決しますよね。
トリガーポイントの特徴
1. 触診で確認可能:
▶︎筋肉内で小さな豆や米粒のような硬い部分として触知できます。
2. 圧痛:
▶︎圧迫すると局所的な痛みを感じます。
▶︎その痛みは患者にとって「これこれ!この痛み!」と再現性のある痛みとして認識されることが多いです。
3. 関連痛:
▶︎トリガーポイントを刺激すると、離れた部位に痛みが放散することがあります。
▶︎この放散痛のパターンは比較的一定で、マッピングされています。
4. 筋肉の緊張:
▶︎トリガーポイントがある筋肉は全体的に緊張し、硬くなっていることが多いです。
5. 運動制限:
▶︎影響を受けた筋肉の柔軟性が低下し、関節の可動域が制限されることがあります。
6. 自律神経症状:
▶︎発汗、皮膚温の変化、めまいなどの症状を伴うことがあります。
7. 潜在性:
▶︎普段は症状がなくても、特定の動作や姿勢で痛みが誘発されることがあります。
8. 持続性:
▶︎適切な治療を受けないと長期間持続する傾向があります。
9. 連鎖反応:
▶︎一つのトリガーポイントが他の部位にトリガーポイントを引き起こすことがあります。
10. 筋力低下:
▶︎トリガーポイントがある筋肉は、しばしば筋力の低下を示します。
トリガーポイントの発生メカニズム
1. 筋肉への負担:同じ動きの繰り返しや急な動き、重いものを持つなどで筋肉に負担がかかります。
2. 筋肉の緊張:負担がかかった部分の筋肉が固まってしまいます。
3. 血液循環の低下:固まった筋肉は血液の流れが悪くなります。
4. 栄養不足:血液の流れが悪くなると、その部分に栄養が届きにくくなります。
5. 痛みの発生:栄養不足で筋肉がさらに固まり、痛みを感じやすくなります。
6. 悪循環:痛みで体を動かしにくくなり、さらに筋肉が固まるという悪循環に陥ります。
これらの過程が重なり合って、トリガーポイントという「痛みのツボ」ができあがります。
2.トリガーポイント療法について
トリガーポイント療法で行うこと
1. 圧迫療法:
▶︎トリガーポイントに直接圧力をかけます。
▶︎指や特殊な器具を使って、10〜30秒ほど圧迫します。
2. ストレッチング:
▶︎影響を受けた筋肉を伸ばします。
▶︎圧迫と組み合わせて行うこともあります。
4. 鍼治療:
▶︎細い針をトリガーポイントに刺して刺激します。
5. マッサージ:
▶︎トリガーポイント周辺の筋肉をほぐします。
6. 温熱療法:
▶︎温熱器具などで局所を温めます。
トリガーポイント療法による効果
1. 筋肉の弛緩:圧迫やマッサージにより、過度に収縮した筋繊維がほぐれることで「こわばり」が解消されます。
2. 血液循環の改善:圧迫後の血流増加や、マッサージによる刺激で血液の流れが良くなります。結果、酸素や栄養が筋肉に届きやすくなります。
3. 代謝物質の除去:血液循環が改善されることで、痛みを引き起こす物質(乳酸など)が洗い流されます。
4. 神経の鎮静化:適切な刺激により、過敏になっていた神経が落ち着き、痛みの感覚が和らぎます。
5. 筋肉の柔軟性回復:ストレッチングにより、硬くなっていた筋肉が伸びやすくなります。
6. 自己修復プロセスの促進:治療による刺激が、体の自然な修復メカニズムを活性化します。
7. 悪循環の遮断:痛み→筋緊張→血流低下→痛みという悪循環が断ち切られます。
3. トリガーポイント療法の適応症
筋骨格系の痛み
トリガーポイント療法では、筋肉内の過敏な小さな結節(トリガーポイント)を見つけ出し、それを指や器具で適切に圧迫し、その後ストレッチを行うことで、筋肉の緊張を解き、痛みを軽減します。
– 腰痛
– 首や肩のこり
– 関節痛(膝、肘、股関節など)
頭痛
頭痛に対するトリガーポイント療法は、主に頭部、首、肩の筋肉に存在するトリガーポイントを特定し、それらを圧迫・解放することで筋肉の緊張を緩和し、頭痛症状の軽減を図ります。
– 緊張性頭痛
– 片頭痛
顎関節症候群(TMJ)
TMJ(顎関節症候群)に対するトリガーポイント療法は、咀嚼筋や周辺の筋肉群(咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋など)のトリガーポイントを特定し、それらを圧迫・解放することで顎の痛みや機能障害を改善し、関節の可動域を回復させます。
姿勢の問題に関連した痛み
姿勢の問題に関連した痛みに対するトリガーポイント療法は、不良姿勢によって過度に緊張した筋肉群のトリガーポイントを特定し処置するとともに、姿勢改善のための筋バランス調整や運動指導を組み合わせることで、痛みの軽減と正しい姿勢の維持を同時に目指すアプローチです。
4. 自宅でできるトリガーポイントケア
簡単なセルフケア方法
1. セルフマッサージ:
▶︎手や道具(テニスボールなど)を使用
▶︎痛みのある部位を探し、優しく圧迫
▶︎10〜30秒間圧迫し、徐々に圧を緩める
2. ストレッチング:
▶︎影響を受けている筋肉を優しく伸ばす
▶︎15〜30秒間保持し、数回繰り返す
3. フォームローラーの使用:
▶︎背中や脚の大きな筋群に効果的
▶︎ゆっくりと転がし、痛みのある部位で一時停止
4. 温熱療法:
▶︎温めグッズや湯たんぽを使用
▶︎筋肉の緊張を和らげ、血流を促進
セルフケアの注意点
1. 過度の圧迫を避ける:痛みを伴う強い圧迫は逆効果
2. 急性の怪我には適用しない:炎症や腫れがある場合は医師に相談
3. 持続的な痛みがある場合:改善が見られない場合は専門家に相談
4. 徐々に始める:強度や時間を少しずつ増やす
これらの点に注意しながら、自身の体調に合わせてケアを行うことが重要です。